労働分配率という言葉をご存知ですか?
これは、企業の人件費を、企業の付加価値額(企業が作り出す価値=売上総利益)で割ったものです。
つまり、企業が稼いだお金の何%を労働者に分配しているか、というもの。
企業は得られた利益のすべてをその会社で働く労働者に配分するわけではありません。
では労働者に分配しなかった、残りの利益はどうなるのでしょうか?
それは、利益剰余金として、①預金としてプールされるか、②投資や返済にまわされるか、もしくは③株主に配当として支払われるか、です。
①や②は企業の体力をつけたり、成長させるものです。
そして③は株主の利益になるもの。
企業を成長させるのに使うのは良いじゃないか、と、そう思いますよね。
もちろん、良いことです。
成長した企業は、さらに雇用を産み出しますので、労働者のためにもなります。
しかし、成長して稼ぎ出した利益はどうなるか。
企業が成長した後、更に企業は大きな利益をあげ、その利益は再び労働者、もしくは①②③と分配されていき、それが繰り返されます。
そしてその際、労働者に分配される利益の割合、つまり労働分配率は年々減っていっているのです。
つまり、より、企業とオーナー(株主)に還元されていっている、ということ。
労働分配率が減っている世界
1994年〜2002年あたりは、労働分配率は74%ほどありました。
それが2017年の値は68.4%となっています。
企業の利益が、労働者に反映されにくくなっていっているのです。
こんな世界で、収入を(企業での)労働に頼っているのは危険だと感じませんか?
世界の成長は労働者の頑張りに支えられているのに、太ってくのが企業とオーナー(株主)だけってどうかと思ってしまいますが、それが資本主義なんでしょう。
労働収入に頼っている日本、収入の1/4は財産収入のアメリカ
図のように、日本は収入の6/7を労働収入に頼っていますが、アメリカでは1/4を財産収入から得ています。
これは、例えば手取りが40万円の人の場合、給与は30万円で、10万円は株式の配当など、財産による所得ということになります。
ちょっと羨ましくありませんか?
一方、日本では財産所得は1/7。
給与の手取りが30万円の場合、財産所得は5万円で、総所得は35万円となります。
また、下の図はアメリカ、イギリス、日本の「金融資産の推移」をあらわしたもの。
日本では個人による投資があまり行われてこなかったため、アメリカ、イギリスと比べて資産形成額が伸びていません。
(日本の投資人口は1,330万〜2,030万と言われています。日本証券協会)
また、以下の図は、アメリカ、イギリス、日本の資産の内訳です。
日本では預貯金の割合が圧倒的に高いですね。
つまり資産を、株などの資産、つまり「お金を産む可能性のあるもの」として持つのではなく、多くを現金で持っている、ということです。
現金は放っておいても増えませんから、アメリカ、イギリスと比べて資産が増えていないのも当たり前の話ですね。
もちろん、日本の特殊な状況を考えると、仕方ないとも言えます。
日本では、1991年のバブル崩壊後に株価が大きく下がって以降、2013年アベノミクスが始まるまで、株価はずーっと低迷していました。
それに、デフレでしたので現金の価値が下がりませんでした。
したがった人々が「株にお金を突っ込んで損をするよりも、地道に預貯金を貯めた方が安心」と思っても仕方がなかった状況だと思います。
ですが実際は、日本の外に目を向ければ、資産形成の道はありました。
例えばアメリカの株価は上昇を続けていたので、S&P500のインデックス投資信託を買っているだけで、資産は年利8%で増やせていたのです。
オーナー(株主)収入を増やしていく。
- 企業の利益が企業とオーナーを太らせる方向に使われていること。
- 更にアメリカやイギリスでは、資産を預貯金で持たず投資をしているので金融資産が伸びていっていること。
その事実を知っても、すぐに株式投資に手を出すのは怖いですよね。
実際、勉強をせずにすぐに手を出すのも危険かと思います。
ですので、少しのお金で運用を始めていくのはいかがでしょうか?
投資信託であれば100円から始められますし、株式も基本的には100株単位ですが、「端株」といって1株から取引をすることも可能です。
(SBI証券ですと、単元未満株として取引できます)
ですので、例えば、コンビニで何となく使ってしまっていたお菓子やペットボトル飲料代150円で株を買ったり(1株100円代の株もあります)、楽天で貯まったポイントで投資信託を買ったり、今まで100%預貯金にまわしていた家計の余りの一部で、ETF(上場投資信託)を買ったりして、小さく始めていくのが良いと思います。
ちょっとずつ投資に慣れていくのが重要なんです。
自分に負担にならない程度のお金を運用して、時々、SBI証券や楽天証券の画面を見た時に、お小遣い程度の含み益が出ていたら、楽しいじゃないですか。
もちろん、下がることもありますので、最初のうちは失っても家計にダメージを与えない額で始めるのが良いでしょう。
働いて預貯金をするだけでは、資産を形成できないことは先ほどのせたグラフが物語っています。
少しずつ、自分が許容できる範囲で始めるのはいかがでしょうか?