幸せを噛み締める男性

幸せは成功よりも前にある? ポジティブ心理学に学ぶ幸せが運ぶ成功の法則【前編】

「成功したら幸せになれる」

私たちの多くがそう信じているのではないでしょうか?

子どもの頃から、

・良い大学に行ったら、
・良い企業に入ったら、

将来幸せになれると信じてきました。
そして大人になった後も、

・昇進したら
・会社を起こして成功したら、
・一流のデザイナーになったら、

そうすれば……幸せになれる、そう信じている人は多いのではないでしょうか?

そして、少しショックなお知らせですが、

それ、どうやら違うみたいです……残念。

でも、ショックな事実ですが、これは良いお知らせでもあります。
だって、成功しなくても幸せは手に入るんですから。

1990年代以降の心理学の研究で明らかになったのは、幸せは成功に先行する、ということ。
つまり、成功したら幸せになれる、のではなく、幸せになれたら成功できる、のです。

え?
意味がわからないですって?
じゃあどうしたら幸せになれるのか?
成功が先じゃないなら、何をすれば幸せになれるのかって?

そうですよね。
勉強や仕事じゃないなら、一体私たちは何の努力をすれば幸せになれるのか。

結論から言うと、「気分」「捉え方」を幸福感を高めるように変える、です。
そしてそれは、練習でなんとかなります。

私たちが最も努力すべきなのは、勉強とか仕事とかではなく、まずは「気分」と「物事の捉え方」なのです。

ポジティブ感情について研究した心理学

今回の記事は幸福優位7つの法則をもとに書いているのですが、これはポジティブ心理学の第一人者、ジョーン・エイカーさんの本です。

それまでの研究はネガティブなものを研究していた

かつて、心理学というのは例えば「なぜアルコール依存症になるのか?」とか「どうすれば治るのか?」など、ネガティブな事柄について研究するものでした。
その研究は必要なことですし、実際、それで様々な病気を回復させる方法が明らかになりました。
ですが、ネガティブなことと同じように、ポジティブなことを研究することも大事なはずです。例えば、

  • あの人はなぜ成功したのか?
  • あの人はなぜ幸せなのか?ということを。

ショーン・エイカーさんはハーバード大学に行った後、12年間、学生指導員として生徒を観察できる機会に恵まれました。
そして、ある大発見をしたのです。

ハーバードに来る学生は皆、優秀な人材である。
だが、中にはストレスに負ける学生がいて、一方でストレスに打ち勝って成績優秀な学生がいる。

そして、ショーンさんは、ストレスに打ち勝つ学生と他の学生との違いを研究し始めたのです。

大前提:脳は死ぬまで成長を続ける。

昔、脳は子どもの頃に成長し、大人になると成長を止める、と思われていました。
しかし、その後の研究で脳には「可塑性」があることが明らかになっています。
可塑性とは、変化する性質のこと。

つまり、私たちの脳は変わることができます。

だから、今からでも捉え方や気分を変えて、幸福度を高める=幸せになることは可能なのです。

幸福感のアドバンテージ

幸福感は健康と長寿をもたらす

幸福に関する長期研究のうち有名なもので、ノートルダム教育修道女会に属する180人の修道女たちの古い日記を使ったものがあります。
彼女たちは毎日、日記を書くように言われていました。
そして日記が書かれて50年経った後、日記の中のポジティブ感情をコード化し、20歳の時の幸福度が、その後の人生に関わりがあるかどうかを調べたのです。
そして結果は、楽しそうな内容を書きつけていた修道女たちは、ネガティブ、もしくは普通な内容を書いていた修道女よりも10年近く長生きした、ということでした。
健康と長寿を、幸福感がもたらしたのです。

幸福感は脳の学習機能・生産性を高める

脳は、ネガティブな感情の時には、思考の幅を狭め、行動を限られたものにします
一方で、ポジティブな感情の時には、脳は可能な選択肢を増やし、思慮深く創造的にします(拡張効果と呼ばれる)。
実験の前に愉快な気分や満足感を感じさせるようにした被験者たちは、不安や怒りを感じさせた人たちよりも、ずっと視野の広い考えやアイデアを思いつくのです。

幸福感、つまり喜びや満足感を感じていた方が、脳の機能を改善し、健康をもたらすのです。
ならば、具体的に何をすれば私たちは幸福感を高めることができるのでしょうか?
幸福感は主観的なものなので、それぞれに合った方法がありますが(音楽を聴く、歌う、絵を描くなど)、方法をあげておきます。

瞑想する

何年も瞑想をしている僧たちは、脳の幸福感を感じる部分(左前頭葉前部皮質)が普通の人よりも発達しているそうです。
メディテーションを定期的に行えば、脳の配線が永久的に変化して幸福度が高まり、ストレスが減り、免疫機能も改善されるという調査結果もあります。

何かを楽しみにする

将来の楽しみを期待すると、実際にそれをする時と同じように、脳の快楽中枢が活性化します。
確かに、旅行を楽しみにしている時など、そのことを考えるだけでハッピーな気分になれますよね。

人に親切にする

利他的な行為をすると、幸福度が高まるということが2000人を調査対象とした研究によってわかっています。

ポジティブな感情が生じやすい環境をつくる

オフィスに家族の写真を飾るなど、見るたびにポジティブな感情が湧く環境にすることも、幸福感を高めるために有効です。
また、暴力的なテレビや悲しいニュースを見ないようにするなど、ネガティブ感情が起きないようにすることも幸福感を高めます。

運動する

運動は快楽物質であるエンドルフィンを放出させ、またストレスや不安を軽減させます。
さらにうつ病の治療に運動を用いた場合、運動は抗うつ剤と同じだけの効果があり、再発率も低いそうです。
運動の恩恵は計り知れません。

お金をつかう(モノを買う以外)

「幸せはお金では買えない」というのも信じられている神話ですが、じつはお金で買うことができます。
この際、モノを買うのではなく、経験を買うことがポイント。
モノを買うためにお金を使った場合、ポジティブ感情は短い期間で消滅します。
誰かと何かを経験するためにお金を使った場合、幸福感は長い期間続くのです。
ちなみに、他人のためにお金を使った場合も、幸福感は長続きするそうです。

マインド(捉え方)を変えると、現実が変わる

こんな実験があるそうです。
アジア人女性たちだけを集め、2回テストをしました。
1回目のテストの前には「女性は男性に比べて数学が苦手だ」と話し、2回目のテストの前には「アジア人は他の人種より数学の能力が高いとされている」と話した。
2回目のテストの結果は、1回目のテストよりもはるかに高かったそうです。

プラセボ効果

偽薬を飲んだだけでも、本当の薬を飲んだのと同じような効果を発揮するプラセボ効果というものがあります。
これは脳が信じることで、体に変化をもたらすもの。
「これは漆だ」と言われて、無害な樹液を肌に塗られると、赤い湿疹が出たという実験結果もあるほど。

ピグマリオン効果

彫刻家のピグマリオンは大理石の塊を眺めて、その中に閉じ込められている彫像を見ることができました。
ある日、彼は最高の理想像、ガラテアと名付けた女性像を完成させました。
彼は愛の女神のヴィーナスに、この理想を現実にしてほしいと頼んで、その願いは聞き届けられたそうです。

ところ変わって、ある小学校で知能テストを行いました。
テストを行った研究者たちは教師たちに「生徒A、B、Cは伸びる最大の可能性を持っている」と伝えたそうです。
そして、本人にそのことを伝えないこと、またその子たちの指導時間を増やしたりしないように、つまり特別扱いしないようにクギを刺しました。
その1年後、再度知能テストをしたところ、生徒A、B、Cの成績はずば抜けて良くなっていたそうです。
ここでポイントは、A、B、Cの1年前のテスト結果は平凡なものだったこと。
つまり研究者たちはA、B、Cを無作為に選び出し、教師たちにウソを言ったのです。
教師たちが彼らの潜在的可能性を信じたことが、言葉以外の方法で無意識のうちに子供たちに伝わり、理解され、それが現実のものになったのです。

誰かの潜在的可能性を信じれば、その可能性は命を吹き込まれる
これを、ピグマリオン効果と呼びます。

つまり、思ったように結果は変わる

ホテルの清掃員を対象に行った実験で、1つのグループには「清掃の仕事は運動の効果がある」と伝え、もう1つのグループには何も伝えませんでした。
すると数週間後、仕事は運動の効果があると伝えられた清掃員たちは、実際に体重が減ってコレステロール値が下がっていたそうです。
また、こんな実験も。
「成長のマインドセット」、つまり自分の能力は努力次第で伸ばせる、と考えている人は、「固定のマインドセット」、自分の能力はもともと決まっていると考えている人よりも、実際に成績をどんどん伸ばしていくそうです。

「この行動は何をもたらすのか」
「自分はどういう人間か」

それぞれ思った内容に合わせて、結果が変わっているのです。
そんなもの、思ったもん勝ちですよね。
私はこう思うことにします。

自分はどんどん成長していけるし、今やっている行動すべてが、自分をもっと進化させ楽しい場所に連れていく、と。

日々の行動を自分がいかに捉えているかが、その行動自体よりも現実を決定する

 

以上、「幸せは成功に先行する、ならば幸せになるためにどうするか」を書いてきました。
まだまだ、幸せになるための方法はありますので、後編に続けることにします。

今回、参考にした本はコチラ。

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